「離れ……?」

眉を寄せるクラリス嬢。なにか気になることでもあったんだろうか。

「……どうして、あなたなんかに……!」

クラリス嬢がわたしを睨む。思わず息を呑んだ。
そして、ゆっくりとわたしに近寄ると、怒りに燃えた瞳でわたしを射抜き、ゆっくりと片手を上げた。

「あなたなんかに…ーー!」

ぶたれる?
そう思ったけれど、一瞬のことに抵抗らしいことも思いつかない。反射的にぎゅっと目を閉じるのが精一杯だった。

ひゅ、と風を切る音が聞こえ、そしてーー。


衝撃は、いつまでたってもやってこなかった。
代わりに、目の前でぱしっと何かを受け止める音がする。

いつの間にか、肩に温かい手が添えられていた。


「ーーグレイ!」