「ここに居るということは、アルハイド伯爵の“食事”相手なのでしょう?全く、あなたのような質素で平凡な女性のどこに伯爵が惹かれたのか、理解できないわ」
ちらりとわたしの顔を見て、クスクスと笑う。確かにクラリス嬢の言う通りだけど、あんまりだ。
「ああ、それとも、屋敷を解雇された後、下町の裏通りででも働いていたのかしら?ねぇ、もし伯爵を誘惑したのでしたら、方法を教えてくださらない?」
「なっ……!」
カッと頬に血が上る。なんてことを言うのだろうか。
それに、こんなーーまるでわたしが、伯爵を誘惑したみたいに。侮辱にもほどがある。
それに、わたしが好きなのは……!
怒りで体が震える。
けれど、それを怯えととったのか、クラリス嬢は更に笑みを深めて言った。
「そういえば、あなたはどこに住まわせてもらっているの?私は、東側で一番大きなお部屋なの。あなたは?」
「え……離れですけど」
ふいをつかれ答えると、クラリス嬢の顔色が変わった。