わたしはその元主人の姿に、驚きを隠せなかった。
どうしてここに?
クラリス嬢は伯爵に振られたんじゃなかっただろうか。それともわたしの思い違い?それ以前に、もしかしたらクラリス嬢ではないのかも。ただの見間違いじゃ……。
けれど、あれは明らかにクラリス嬢だった。仕えていたわたしがわからないわけがない。
……それならどうしてここに?
また最初の疑問に戻ってしまう。
もやもやと考えこんでいると、その女性がくるりと振り返った。
ぱち、と目が合う。
一瞬、何故かしまったと思ってしまったけれど、その思いは案外外れていなかった。
クラリス嬢の方は、すぐにわかったらしい。
「あなた……っ!」
声を上げると、かつかつとわたしに近寄る。距離が縮まるたびに、クラリス嬢の眉は、驚きと怒りで吊り上がってゆく。