「……ノアさん、すみません」
「ど、どうしたの?グレイ」

いつものように、庭へ行きましょうと誘ったわたしに、グレイは申し訳なさそうに言った。

「少し、別の仕事がありますので、すぐに行きますから、先に行っていてくれませんか?」

心なしか落ち込んだ様子のグレイに、わたしは少し慌てつつ、

「わかったわ。待っているから、気にしないで」

そう笑った。



ひとり、屋敷の廊下を歩く。
何度も通っているので、道は完璧に覚えているけれど、広く豪華な屋敷の廊下は少し緊張する。
グレイがいたらそんなことはないんだけど、と思って、自分で恥ずかしくなった。

わたしのなかで、グレイが大きな存在になっている。
それを実感してしまったから。

それに……。

「……愛してあげるって、言っちゃったのよね」

思わず声に出してしまった。慌てて周りに人がいないのを確認する。
ほっと息をつくと、今度はじわじわと頬が熱くなった。