と、乱暴に髪の毛を引っ張られ、わたしは小さくうめいた。
何……?
機嫌が、悪い?
すると、それでも悲鳴をあげないわたしの反応がつまらなかったのか、チッと舌打ちしたあと、低い声で囁いた。
「お前は……私が嫌いか」
その質問に、カッと体が熱くなった。
嫌いかどうか?
そんなこともわからないのだろうか。
それともーーわたしが、ちょっと綺麗な顔の貴族に待遇良くしてもらったら落ちる女だなんて、安く見られている?
「…ええ、大っ嫌いよ!!」
気がつくと、そう叫んでいた。
口にした瞬間にしまったと思ったけれど、もう遅い。
けれど、伯爵は、なぜか怒ってはいなかった。代わりに小さく、
「そうか」
そう答えた直後、再び歯に貫かれる。
「~~~~」
痛い。痛い。さっきより深く鋭く牙を沈められる。