つかつかと歩み寄ってきた伯爵は、昼間見たときと同じ、怖いくらい美しい顔をしていたけれど、どこかイライラしているように見える。
そして昨晩と同じように、わたしに覆いかぶさる。
「……」
恐怖に身をすくませつつ、わたしは、ある決意をした。
今晩は、絶対に、昨日のようにあっさり屈服したりしない。痛みに負けて、みっともなく懇願したり、泣いたりしない。
だって、わたしにはグレイがーー。
けれど、わたしを食す伯爵様は、決意する時間すら与えてはくれない。
首筋に顔をうずめたかと思うと、鋭い牙を突き立てた。グレイの巻いてくれた包帯はとっくに取り払われている。
「ーーッ!!」
体に走る痛みに、思わず叫びそうになる。けれど、ぎゅっと目を閉じ必死にこらえる。