グレイはどうなの?
わたしは、グレイに優しくしてもらって救われた。つらくて、悔しくて、今にも壊死してしまいそうだった心を、守ってくれた。泣かせてくれた。
じゃあグレイは?
グレイは誰も助けてくれなかったの?
助けてもらわなかったの?
泣かせてくれる人も、救ってくれる人も、
ーー愛してくれる人も、いなかったの?
そんな、そんなの。
……そんなの嘘だ。
だって、嘘じゃなかったら……。
……あまりにも、可哀想だ。
「……グレイ」
呼びかけた声が僅かに、震えた。
グレイと目が合う。さっきまで無表情に見えたあの瞳が、今は違って見える。
まるでーー。
愛してくれと、叫んでいるように。
そんな風に見える。
「グレイ」
ゆっくりとわたしは、グレイに歩み寄った。柔らかな芝生を踏みしめて、一歩一歩。
そして、立ちすくむグレイを抱きしめた。
力の限り、抱きしめる。グレイに、わかってほしくて。
あなたを、愛してる人がいるって。
「…ノア、さん」
耳元で紡がれた声に、どきりとした。
どくどくと心臓が脈打つ。とても鼓動は速いのに、不思議と心は温かく、そして切なく締め付けられる。