グレイもそれは感じていたのだろう、
「お礼なんていいんです」
と小さく言った。
それが照れ隠しや、仕事上の社交辞令とは違う感じがして、わたしは一人首を傾げる。

グレイは、戸惑っているみたいだ。まるで、こんな扱いを受けたのは生まれて初めてとばかりにーー。

そのとき、あることがふと頭に浮かんだ。

そういえば、吸血鬼って普通の食事をとれるのかしら?

もしかして、血以外は口に出来ないとか?
けれど、いつだったかクラリス嬢が、いつかアルハイド伯爵とお食事をしたと言っていたから、普通の食べ物も食べるのだろうか。

そんなことを考えているうちに、グレイは半分ほどサンドイッチを食べていたので、食べられない人に無理強いをしたのではないとわかって安心した。

わたしもサンドイッチにぱくつく。
やっぱり、いつもの何倍も美味しい。

と、今度は別の疑問が浮上してきたので、思い切って尋ねることにした。

「ね、グレイ」
「なんでしょう」
「あなたも吸血鬼よね?いつもはどこで血を飲んで……いえ、“食事”をしているの?」

グレイはしばらく考えこんだ。もしかしたら、伯爵と同じように、女の人の血を……そう考え、なぜか胸がちくりと痛んだ。

……?

グレイが口を開いた。