数十分後、わたしとグレイは、昼食用のサンドイッチとデザートのお菓子を持って、中庭に来ていた。

「わ……!」

思わず声をあげる。身動きし易いようにと、丈の短いワンピース型の軽いドレスに着替えてきて良かった。
爽やかなそよ風が吹き、ドレスの裾がふわりとなびいた。


流石、大きな屋敷の中庭だけあって、敷地は広く、柔らかな芝生は整えられている。花も咲いていたりして、まるで小さな草原のようだ。

「グレイ、ここにしましょう!」

子供のようにはしゃぐわたしに、グレイは戸惑い気味だ。けれど、大人しく芝生の上に腰を下ろした。


「綺麗ね」
「この場所は、庭師が手入れしていますから」
「そうなの。道理で芝生が揃っているわけだわ」

本当、綺麗な庭だ。
こんな場所だと、尚更ご飯が美味しくなるだろう。


「どうぞ、グレイ」

一番美味しそうなサンドイッチを差し出すと、グレイは
「いえ、私は」
と、案の定断ろうとした。

そんなグレイの態度を予想していたわたしは、少し意地悪かしらと思いつつも、悲しげに眉を下げてみせた。

「ひとりぼっちで食べるより、ふたりで食べたほうが美味しいのよ。……グレイ、わたしと一緒に食べるのは、嫌?」
「……!」

その瞬間、グレイが焦ったのが手にとるようにわかって、思わず笑ってしまった。
そして、遠慮がちにサンドイッチを受け取ったグレイに、言う。

「ふふっ、ありがとう、グレイ」

なんだかわたしは、グレイにお礼を言ってばっかりだ。