昨日血を吸われたせいなのか、本当に食欲がないのだ。

けれどグレイは、半ば懇願するように言う。

「軽い物でもいいです。すぐに持ってくるので、待っていてください」
「あ、あの、グレイ…?」

すぐに部屋を出たグレイを止める間もなく、わたしは絨毯に佇んだ。





グレイが持ってきてくれたのは、美味しそうなコンソメスープだった。
これなら確かに胃に負担もかからないし、食べきれそう。

でも……。

今わたしは、ベッドに上半身だけあげて座っている。その隣で、グレイはじっとわたしを見つめたまま、立っているのだ。

……食べづらい。

スプーンを持ったまま固まっていると、グレイは何を勘違いしたのか、わたしのスプーンを取った。

「グレイ?」

食べないと思って片付けるのかな、と思うと。

グレイはスプーンとお皿を持ったまま、ベッドの傍にひざまづくと、スプーンでスープをすくって、わたしの口元に持ってきた。
そして冷静な声で一言。



「どうぞ」


――ええ!?