「なんでしょう?」

優秀な執事である彼はすぐに部屋に入って、礼儀正しく尋ねる。

「え、えっと、たいしたことではないんだけど……」

なんだか申し訳ない気分になりながら、くるりと背中を見せた。

「あ、あのね、リボンが、結べなくて……悪いんだけど、結んでくれない?」

すると、三秒ほど沈黙の後、

「……はい」

と返事が返ってきてほっとした。
背中にかかった髪を上げると、しゅるしゅると微かな音とともに、リボンが結ばれていく。

静かな部屋に響くその音に、妙にドキドキした。
一秒が妙に長く感じられる。

「出来ました」
「あ、ありがとう、グレイ」

まるで照れ隠しのように、笑ってお礼を言いながら、ふとわたしは思った。


……グレイは、なんでこんなに、わたしに良くしてくれるんだろう。