「昨日は多めに食事されていたようですから。しばらく安静になっていてください」
「わ、わかったわ」
丁寧にベッドに戻され、こくりと頷く。
「どうぞ」
ドレスを渡され、ありがとうと受け取った。
外で待っていますというグレイに頷き、ネグリジェを脱いで、ドレスを着る。
……と、あれ。
どうしよう。
ドレスを着てから気が付いた。
品の良いベルベットのドレスは、黒が基調とされていて、わたしの趣味にも合う。けれど、血を吸いやすくするためだろうか、肩の露出が大きく、背中にはリボンが通されていた。
……結べない。
五分ほど悪戦苦闘し、背中に手を回して結ぼうとしたけれど、見えない場所の蝶々結びは難易度が高く、その上リボンを一つ一つ穴に通さなくてはいけない作り。
けれど、わたしが頼れる執事はグレイしかいない。
どうしよう。で、でも、もうほとんど着た状態だし、後ろを結んでもらうくらい……。そう思って、少しだけ扉を開け、
「……ぐ、グレイ」
小声で、廊下に立っていたグレイに呼びかけた。