「……ありがとう」


やがて涙も枯れて落ち着いた頃、わたしは恥ずかしさに顔を赤くしながら、小さくつぶやいた。
知り合って間もない男の人の胸で泣き続けるなんて、恥ずかしい。
けれどグレイは、笑ったりせずに「いえ」と首を振った。

「それでは、着替えを持ってきますね」
「え、ええ、お願いします」

部屋のクローゼットの中からドレスを持ってくるグレイ。
それは、以前お仕えしていたクラリス嬢だって持っていなかったんじゃないかと思うほど、豪華なものだった。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

慌ててベッドから飛び起きると、くらりと眩暈がした。

「ノアさん」

絨毯に崩れ落ちそうになるのを、グレイが走って支えてくれる。

「あ、ありがとう……どうしたのかしら。わたし、体は弱くないのに……」

不思議に思ってつぶやくと、「貧血でしょう」との答えが返ってきた。