わたし、ノア=ルシアが、サンセットの中でもそこそこ大きな屋敷のメイドとして働いていたのは、約1ヶ月ほど前の話だ。
メイド養成学校でも成績は悪くなかったはずなのに、とある事情によって、その屋敷に住んでいた貴族のお嬢様に、嫌われてしまった。
それでもこのご時世、新しい就職先を探すのは厳しく、一生懸命働いていたのだけど……結局追い出され、晴れて失業中の身。
その後も転々と仕事を繰り返したけれど、結局、どこも不況ですぐにクビ。
そして今も、働き口を探してるとこなのだけど。
「今日もダメかしら……」
どうしよう。
お腹はすいたし、最近ろくに寝てないし、家は……ない。わたしの母さまと父さまは、わたしが小さいころ、吸血鬼に殺された。
行くあてもない。
倒れそう。
そのうち、人気のないレンガ通りで、体力の限界が近づいたわたしは、少し休憩することにした。
休憩、休憩……ああ、あれ?
なんだか……足が、ふらつく。
力がはいらない。
でも、このまま倒れたって、悲しむ人もいないと思うし。
もういいかな、頑張ったよね、わたし。
そう思うと、体から一気に力がぬけた。