途中から意識はなかったけれど、あのあと明け方まで散々血を吸われつづけたらしく、まだベッドには、伯爵……セルジュ様の温もりが残っていた。
それに、首筋の傷がまだ乾いていない。
「ノアさん」
呼びかけられて、のろのろと視線を上げる。
そこにいたのは、グレイだった。
片手に、白い布を持っている。……包帯?
体を動かすのもだるいわたしを察してか、足音もたてず傍にくると、わたしの上半身を支え、あげてくれた。
そして、首に包帯を巻いてくれる。
「……ありがとう」
呟くと、一瞬グレイの手が止まった。けれどすぐに、「いえ」と首をふる。
少し迷ったけれど、わたしはもう一度口を開いた。
「……その、このまえは……ごめんなさい」
悪いことをした。申し訳なさと情けなさで、視線を上げられない。
「わたし…あなたに酷いこと、言ったわよね……ごめんなさい。わかってるの、あなたのせいじゃないって……でも、その」
最後は言葉にできず、うつむいた。
すると、しばらくの沈黙のあと、グレイは信じられないことを言った。