最低な言葉を吐きながら、つぅっと傷口を舌が這う。背筋が粟立った。

「や、め……やめてくださいっ!!」


さっきまでの強がりは一瞬で消し飛んだ。あるのは恐怖だけ。
鼓動が早く感じるのは、傷のせいだろうか。乱れたネグリジェに青ざめる。

「嫌っ……!」

悲鳴すらも楽しむように、伯爵はくすりと笑みをこぼした。

そして、鈍い痛みが、わたしを襲った。


「……あ、ぁ…!」


血を、吸われている。
ここまでくれば、抵抗もできなかった。体中が痺れる感覚。痛みのなかに妙な感覚が混ざり、生温かいような冷たいような、いままでに感じたことのないものが、わたしの体に染み渡る。

「い、ぁ……っ!」


時折、傷口に歯を立てられて、うめく。

「あ…る、はいどっ、はく…しゃく……も、やめて……くださ…」

息も絶え絶えに訴えると、こぼれた赤を舐めとりながら、伯爵が言った。



「……アルハイド伯爵じゃない。……セルジュ=アルハイドだ。……セルジュ様と呼べ」