こんなにたくさん話してくれる水樹くん、初めて見た。
あたしは何も言わずに、頷いて聞く。
「だからさ、隠し通すつもりだったよ。
颯にだけは特に、絶対にばれたくなかった。
……きっと、颯のことが大好きな桜華ちゃんだから、好きになった」
じわり、と涙が浮かぶ。
なんでだか、分からないけど。
「今から言う言葉、熱のうわごとだと思って聞き流してくれていいから。
……だから、1回だけ、言わせて。
今日が終わったら忘れていいから。
明日からはまた、いつも通りに戻ろう」
こくん、と頷く。
静かな部屋で、時計の秒針だけがカチ、カチ、と鳴る。
明日には戻ろうって言ったって、完全に何もなかったことには、きっとできない。
だってその言葉は、そんなに簡単に忘れられるような軽いものじゃない。
水樹くんにとっても、あたしにとっても、大切なことだと思うから。