「傘、入って」 大きめのビニール傘を差し出されて、きゅっと胸が痛む。 水樹くんは、優しいから。 優しいから、大好きだから、傷付けたくなくて。 あたしは自分のことしか考えてなくて、どうしたらいいのかわからなくて。 「だ、大丈夫! すぐそこだから、走って帰れるよ」 「そんなわけにはいかないでしょ」 そう言って半ば強引に傘を半分貸してくれた。 近すぎる距離に、下を向くことしかできなくて。