「……雨だ」 急に降り始めた雨の勢いは強くて、雨の匂いが立ち込める。 どうしよう、走って帰るしかないかな。 ……傘を、買うほどの距離じゃないよね。 そう思って一歩踏み出した瞬間ーー…… 「桜華ちゃん?」 「え……」 水樹くん。 柔らかい茶髪は、いつもより湿気を含んだのかふわりとしている。 ……そういえば、前もこのスーパーで会ったっけ。 前も、クッキーの材料を買いに来た時に水樹くんに会ったことを思い出す。