「-…あのさ」
颯くんが何か言いかけたとき。
『観覧車最後尾でーす』
というスタッフさんの声が颯くんの言葉をかき消した。
「あっ、観覧車!」
もうすぐ閉園になるから、今のうちに並んでいないと乗れないはず。
「颯くん、並ぼう!」
最後尾に走り出したあたしの手を掴んだ颯くんに、足が止まる。
「颯く……」
ふわっと首に巻かれたマフラー。
「え……」
冷たかった首が急に暖かくなる。
白くてフワフワで、所々に小さなパステルカラーのリボンがついたマフラー。
可愛い…。
「メリークリスマス」
そう言って笑った颯くんは、今度はあたしの手を引いて、並ぶか、って歩き出す。
「あ、ありがとう!」
って言うと、振り返った颯くんがまた笑うから、あたしはもっと嬉しくなる。