PM 9:00



「お・・・」

鏡の中に、新しい自分を見つける。

オレがお客さまに届けたいもの。

「お・・・って、ルウ、それだけ!?」

あ、なんか拗ねてる美容師さんも見つけた。

まぁ・・・初めてにしては、頑張ったんじゃないか?

「だって、ココ。オレ、アレンジしてもらっただけだし」

「えぇー。カットしたのに・・・」

「少しだけな」

「もー、いいもん!」

あはは・・・。

ごめんな。

素直じゃないよな、オレ。

ココ。

ほんとの気持ち、届いてるかな。

ぎゅっ・・・

「ん?」

あ・・・。

鏡の中で、美容師さんが、オレを見つめてる。

ココ。

後ろから抱きしめてくれる腕。

オレは、ココにいつも見守ってもらってる。

きっと、お互い。

ほんとは、ただそれぞれが寄り添ってる。

その小さな気持ちが重なっているだけ。

それだけで、こんなにあたたかい。

「ココ・・・」

「・・・ルウ?」

名前を呼ぶだけで。

大丈夫だと思えるから。

「ありがとう。ココ、頑張れ」

今なら、伝えられそうだと思った。

志を持ち始めてる君だから。

ココの決めた明日を。

オレはずっと見ているから。