思い出した。

きっと、あの時だ。

眠れなくなったのは、あの夜からだ。

仕事帰り、いつものように寄ったスーパーでオレの美容師仲間に会った時。

オレは、ずっと繋いでたココの手を。

隠すように、離してしまったんだ。

「ココの悩み。お酒で消そうとしたの?」

オレの瞳を見てくれない。

「ごめんな。オレ、ココのこと、秘密にしたかったって言えば言い訳になるけど」

恥ずかしさも感じてしまった。

「僕。ルウに迷惑かけたくないんだ」

「迷惑?」

「うん。僕とのこと、恥ずかしいって思ったのなら、きっと迷惑になってるから」

オレの情けない気持ちは、もうココに伝わってたんだな。

でも・・・

「ルウ?やだ、離して」

オレは、小さなココの手にもう一度、手を重ねる。

「勝手でごめん。オレの方こそ、ココに迷惑かけてばかりで、ごめんな」

まだココの体が震えてる。

「ココ・・・。それでもオレは、ココが大好きなんだ」

ココ、泣いてるのか?

後ろから抱きしめてるオレの頬に雫が落ちる。

「ルウ。わがまま言って、ごめんなさい。僕も・・・だいす・・・」

「え?なんだって?最後、聞こえなかったから、もう一回」

「は?図々しいんだよ、ルウ」

いつものココ。

ごめんな、不安にさせて。

「ココ」

ちゅっ・・・

「やっ。ルウ、やめろよ」

ダーメ。

今夜は。

「お詫びをいっぱいしてあげるね、ココちゃん」

「やだぁ!」

ココがゆっくり眠れますように。