柔らかい朝日が僕らを包み始めた頃。

ルウは、ソファーで、安心したように眠っていた。

今日は、お店はお休み。

どちらかというとインドア派の僕らは、リビングで一緒に過ごしてた。

言葉がなくても。

ただとなりに居てくれるだけで、僕は、笑顔だった。

僕は。

いつまでも、ルウに甘えてちゃいけないんだ。

簡単にまとめた荷物を持って。

僕は、夜明けの街に身を委ねた。

「ルウ・・・ごめんね」

また、あの夜のベンチ。

物影から小さな瞳で僕を見つめる、野良猫。

「ルウ・・・ありがとう」

猫ちゃんに伝えたら、ルウにも届く気がした。

「・・・ルウ・・・」

離れたくないよ。

ぎゅっと抱きしめると、猫ちゃんがくすぐったそうに身をよじらせる。

ピロロロ・・・

「・・・んぅ。メールかな」

ルウだ・・・。

『ココ どこ行った おなかすいた ご飯』

・・・ダメなんだ。

もう作ってあげられないんだ。

「うっ・・・ごめんっ、ごめんなさい・・・ルウ」







どれくらいの時間、僕は泣いていたのだろう。

ピロロロ・・・ピロロロ・・・

聞こえ始めた電話の音で、僕は、もう日が高くなっていることに気付いた。

「ミアちゃん・・・?」

ピッ

「もしもし、ミアちゃん?」

「心くん!今、どこに居るの!」

「え・・・えっと・・・」

「なにしてるのよ!心くん!」

「え?どうしたの?」

「ルウが・・・ルウが事故に遭ったの!」

どうしよう。

僕は、もう分からないよ・・・。