駅の改札をするりと通り抜けて、あたしはホームで一人電車を待つ。


美咲さんは「待ってて」って言ったのに。


悪いことしちゃったかな。



先輩、花火嫌いだったんだ。


本当は来たくなかったのかな…?



その時、あたしは先輩の言葉を思い出した。



―俺、自分の目には見えないもの信じないもん。




ねぇ、先輩。


花火は目に見えるでしょう?


なのに、どうして嫌いなんですか?


一瞬で消えてしまうから?


ねぇ、先輩。


先輩の瞳には、今日あたしは居ましたか?



泣きたくないのに勝手にあふれる涙。


周りの人に悟られないように手で顔を隠す。