待ち合わせ場所の駅は、あたしが引っ越す場所の最寄りの駅だった。


海の近い場所。


待ち合わせより少し早く着いてしまったけど、そこにはすでに先輩と美咲さんの姿があった。


私服を着た先輩はシンプルなんだけど、どことなく大人っぽく見えた。


黒いシンプルなカットソーに少しだけダメージ加工が施してあるデニム。


美咲さんは黒の大人っぽいマキシ丈ワンピースに肩にはレモン色のカーディガンを羽織っていた。


美咲さんの右手には火のついた煙草。


二人とも私服だ。


あたし、気合を入れすぎちゃったかな?


先輩と二人なわけじゃないのに…。


あたしも私服で来ればよかった。



「あ、ちびちゃん!」



先輩が気付きあたしを手招きして呼んでくれている。


あたしは浴衣だからぎこちなくしか走れなかったせいか、美咲さんが煙草の煙を吐いて笑いながら言った。



「危ないから走らなくてもいいよ」



その笑顔はとても美しくて、なんだか嫌になってしまう。


なんでだろう。


美咲さんの余裕のある雰囲気が、あたしの心にグサリと刺さる。