日はすっかり暮れて、辺りは暗かった。



「圭介くんどっち方面?」


「あ、俺は…」



翔さんに尋ねられて答えようとした時に美咲さんが遮るようにこう言った。



「私、車だからけーすけ送っていく」


「あ、説教?」


「もちろん!」


「頑張れ。少年」



彼らは笑いながら「じゃあね」「バイバイ」など口々に帰っていった。


俺は美咲さんと肩を並べて駐車場まで歩いた。


無言で歩く俺たち。


少しだけ彼女の歩くスピードが速くなる。


…もしかして怒ってる?


俺、調子乗りすぎた?



「つんちゃん…」



俺の声が聞こえないのかな?


いや。


そんなはずはない。


だって、結構大きめの声で言ったから。



「つーんちゃーん」


「なに?」



小さく睨む彼女。


ちょっとだけ不機嫌だった。



「怒ってるの?」


「べっつに!」


「……」


「…」


「…ごめん」



沈黙に耐えられなくなったのは俺の方だった。


俺の足は自然と止まり、目線はアスファルトだ。


足早に前を歩いていた彼女の靴音が俺の方まで戻ってきた。


そして、彼女は軽く屈んで俺の顔を覗き込みこう言った。



「仕返し」



そして、いつもの笑顔。


それだけで、俺は安心してしまう。


思わず彼女に手を回し抱きしめていた。


本当に怒ってしまったんじゃないかと不安だったんだ。