少し重い扉を開けると、外の湿度を含んだむわっとした空気が俺の体にまとわりつく。


冷たくなった肌があっという間に汗ばんだ。



「あ、そうだ」



俺は思い出したかのように携帯を取り出す。


メールが来ていたんだった。


2通の新着メール。


1通は美咲さん。


もう1通は、あの子。



【まぁ、日取りは圭介に合わせるよ。夏期講習とか行くの?私は学校も殆どないし、バイトくらいしかないから融通は利くよ!】



【こんにちは★今日も暑いですね;;そういえば、来週花火大会なんですよね!先輩、知ってましたか?】



2通のメールの内容はこんな感じだ。


俺はまず、美咲さんにメールの返信をした。


彼女は忙しくない素振りを見せるけど、今のバイトは結構ハードだと思う。


何をしているかはわからないけど、バイトの翌日は寝坊することもしばしばあるから。


よく1限の授業に出られないとよく言っていた。


それなのに、たかが俺の受験勉強の邪魔をしないように気遣ってくれることが嬉しかった。



そして、あの子からのメールの返事をしようと思った。


だけど、思い浮かぶ言葉がなかった。


‘うん。そうだね’


そんな言葉しか浮かばなかったのだ。


こんなこと言ったら申し訳ないけど、少し面倒くさい。


最初の頃は徐々に警戒心や壁が取れていく様が面白かったり、嬉しかったりしたけど、こうも懐かれると…。


ふと、勇樹の言葉を思い出した。



―あの子見てると、1年の頃のお前思い出すわ。



1年の頃の俺…。


こんな感じだったのか?