あたしと先輩はいつもより遅く歩いていたせいか、長い時間歩いているように思えた。


駅に着き、お互いに改札を潜り抜け同じホームで電車を待つ。


先輩は自販機の方へ歩いて行った。


飲み物を買うのだろう。


あたしもテテテと先輩の後をついていく。


その様子が可笑しかったのか先輩は吹き出して笑って言った。



「…警戒心なくした子犬みてぇ」



先輩は笑いが止まらないのか、「くくく」と笑いながら自販機の飲み物を取り出し、あたしに渡す。


缶のリンゴジュース。


手渡してすぐに先輩は新たな小銭を自販機に飲み込ませた。



「先輩…これ…」


「頑張り屋さんの1年生におにーさんからのご褒美です」



先輩は再び自販機から飲み物を取り出しすぐにプルタブを開けた。


プシュッと先輩が開けた缶は微糖のアイスコーヒーだった。



「コーヒー好きなんですか?」


「うん。ブラックは飲めないけど」


「ふぅん」



あたしが何気なく相槌を打ったら先輩は



「あれ?聞いておいて興味ない感じ?」



と、おちゃらけて悪戯っこみたいにニッと歯を出して笑っていた。


今日の先輩はいつもより無邪気だ。


はじめて見る少年みたいな先輩の姿が愛くるしく感じる。


後輩のあたしが言うのもなんだけど…。



「ねぇ、先輩?」


「ん?」


「なんで、あたしはリンゴジュースなんですか?」


「なんとなく。そんなイメージ」



先輩がそういってゴクッと缶コーヒーを口に流し込んでいた。


あたしは「いただきます」と言いプルタブをプシュッと開けた。