美咲さんに恋愛感情はない。


そう先輩が言ったから、あたしは少しだけドキドキしていた。


ありえない事なのに。


あたし、頑張ったら先輩はあたしを見てくれるかな?


そんな、変な期待をしてしまう。



「そういやさ、俺、思ったんだけどさ」


「なんですか?」


「最近、よく笑うようになったね?」



そういう先輩と目が合って心臓が大きく飛び跳ねたのがわかった。


ただ、笑うようになったと言われただけなのに、あたしの気持ちが見透かされたのかと思った。



「そうですか?」


「うん。笑った方がいいよ!ちびちゃん、損してる気がする」


「損?」


「初対面の時よりも何倍も可愛くなった」



美咲さんにも似たようなことを言われたけど、先輩が言うだけでなんでこんなに嬉しいんだろう。


そして、どうしてこんなにくすぐったいんだろう。


あたしの頬はきっと赤いだろう。


すごくすごく赤いだろう。


自然と口元も緩んでしまう。


あたしは、顔を隠すように俯いて思った。



今が夜でよかった。


周りに先輩以外居なくてよかった。


今日、図書室で待っててよかった。


先輩に『可愛くなった』という最高のプレゼントを貰えた気がした。


すごく嬉しかった。


今だけ、先輩の左側があたしの特等席って思っててもいいよね?