その数分後、背後の扉が開く音がした。


あたしの心は自然と期待する。


でも、振り返らない。


先輩だけが呼んでくれるあの名前で、呼んでもらいたいから。


だから、振り向かないの。


振り向いてしまったら、待っていたことがバレてしまいそうだから…。


今、入ってきた人が先輩でありますように…―。


その時、ポンと肩に軽く手が置かれるのがわかった。


そして、



「ちびちゃん」



と、呼んでくれた。


笑顔と一緒に。


あたしも自然ととびきりの笑顔を返す。



「今日も勉強するの?偉いね」



先輩は少し声のトーンを落として、あたしの隣の席にカバンを置き、そのまた隣の椅子に座る。


先輩はカバンの中から参考書とか色々なものを出す。


その中に大学の赤い過去問題集が置かれる。


数種類の大学の過去問。


あたしの知っている学校もあれば、知らない学校もあった。