顧問ははぁっと深い溜め息をついた。



「どうして音楽の道に進まなかったのかしら…。今もこれだけ弾けるなら…」

「ゴメンね。せんせ」



溜め息と一緒に言われた言葉に、美咲さんは困ったような笑みを浮かべていた。


彼女は、こう続けた。



「どうしてもね…。親に迷惑かけたくなかったの。でも、ピアノはいつでも弾けるし、歌もいつでも歌える」



切れ長の彼女の瞳は、真っ直ぐどこか未来を見据えているようだった。


進路のことで何かあったのかな…?


今日出会ったばかりの美咲さんのこと何もわからないし、何も知らないけど、あたしにはわからない苦悩があったのかな…?


進路って決めるの大変なんだ。


2年後のあたしは何してるんだろう?


明日のことだってわからないのに2年後、


【3年生になった自分】


そんなのは遠すぎる未来のように感じる。