前奏が余りにも綺麗すぎて、あたし達は歌うことが出来なかった。


その時、透明感のあるソプラノの声がした。


美咲さんだった。


美咲さんはピアノの音色と同調するように体を揺らし、歌う。


その後になな先輩が続く。


そして他の先輩が続く。


なんて綺麗な歌なんだろう。


思わず聞き惚れてしまった。


体にまとわり付く湿度のことなんて忘れてしまいそうだった。


その時、ピアノの隣にいた顧問と目が合ってしまった。


優しく微笑む顧問。


あたしはその時やっと自分が歌っていなかった事に気付いた。


少し遅れてあたしと花月が加わった。