なに、この子。


いちいち可愛いんだけど。


こんな子猫みたいな弟欲しかったな。



「時間ある?もしよかったら聞いてくれない?」


「え…?」


「あ、時間ない?」


「いえっ。あります!」


「…無理しなくていいよ?」


「先輩のピアノ、聞きたいです!」



私は「じゃ、座って」と彼を椅子に座らせて、左手で最初の音を押した。


鐘のような低音と清らかな音色が混ざり合って心地がいい。


足のペダルを器用に押し直し、極力音が濁らないように気を付けた。