「…ごめんな。」



父のこの一言が私の夢を断ち切らせた。



「…今から音大なんて無理だし」



私はそう言って、この話し合いを無理やり終わらせた。


早く部屋に戻りたかった。


両親の前で泣いてしまったら、きっと彼らは罪悪感に駆られることになる。


もしかしたら、我を忘れて怒鳴ってもよかったのかもしれない。



『じゃあ、どうして10年以上もピアノ習わせていたの?』


『どうしてソルフェージュや楽典やらせてたの?』


『どうして私のピアノを褒めたの?』


『どうして‘つぐみの弾くピアノは心地がいい’なんて言ったの?』


『どうして音楽以外のことに興味を引かせようとしなかったの?』



たくさんの想いを胸に仕舞い込み、私は部屋に戻り布団にうずくまり泣いた。


夜中、目が覚めたとき、私は机の引き出しの中にあったコンパスの針で耳たぶに穴を開けた。


私の一つ目のピアスだった。


耳たぶのじりじりとした痛さがなんだか心地よかったのをよく覚えている。