「話っていうのはな…」


「進路のことでしょ?」



父の言葉を遮り、私は俯き加減に言葉を投げた。


そんな父は静かに頷いた。


そして、申し訳なさそうにこう言った。



「…音大行きたいのか?」


「……。」



私は真っ直ぐ父を見つめるだけで頷くこともなく肯定も否定もしなかった。



「ピアノ、好きか?」


「…今、それ、関係あるの?」



私は両親の見えないテーブルの下で部屋着のスウェットを強く握った。


本当は言いたかった。


『音楽の勉強がしたい』


『音楽の先生になりたい』


『ピアノが大好き』


と。


だけど、言えなかった。


言ったら両親を困らせてしまうと思ったから。