なな先輩の隣の席だという‘圭介先輩’は今日も優しくしてくれたのだという。


授業中には机の下でメールをしているのに数学は学年でもトップクラスなのだという。



「なんか、一生懸命片思いしてるけど彼女いるかもしれないんだよね…」



なな先輩が切なげに零した。


彼女はこう続けた。



「あいつさ?基本的に皆に優しいんだよね。同級生にも後輩にも。だからモテるんだけどさ…でも、残酷なんだよ」

「残酷?優しいなら良くないですか?」



花月が不思議そうに尋ねた。


確かに、冷たいよりは優しい方がいいと思う。



「彼女がいるなら、他の女に優しさ振りまく必要ないよ」



…そうなんだ。


皆に優しいんだ。



あたしの中での‘圭介先輩’が色濃くなった。