「…彼氏でも何でもないくせに」



俺が注意した後に必ず言うセリフだった。


なぜか、その言葉を聞くと俺の心は少しだけ影を落とす。


曲が決まったようで彼女は曲を入れる。


俺も曲を決めてピピピと操作をする。


彼女が入れた曲のイントロが流れ、画面の右上に俺の選んだ曲名が表示される。


マイクを構えた彼女は目を輝かせながら俺の方を向く。


そう、彼女が好きな曲を入れたのだ。


そして、彼女が歌おうとしている曲も俺の好きな曲だった。



~♪


透明度の高い…だけど、力強い彼女の声が部屋に響く。


この声の綺麗さは歌手でも通用するんじゃないかと思うくらい惚れ惚れする歌声だった。


この後に俺が歌うなんてなんだか気が引ける。


だけど、俺はこの歌声が聞きたかったんだ。