エレベーターの中ではずっと彼女がにこにこしていた。


俺はそれを見ながら、さっきの唇を噛んでいる彼女の姿を思い出した。



「…つんちゃん、さっき泣きそうだったでしょ?」


「え…?」


「だって…」



タイミング悪くエレベーターが開く、彼女は引いていた俺の手を離し、部屋番号を探す。



「あー!ドリンクバーが近いよ!よかったね。けーすけ」



はぐらかされた。


俺は彼女から聞きたいこと一つ上手く聞き出すことすらできない。


然程広くない部屋に入り、思い思いの場所に腰を下ろす。


彼女は曲を選ぶ前に煙草に火をつける。


俺は座ったばっかりだったけど、飲み物を取りに行くために立ち上がった。



「つんちゃん何飲む?」


「ホットカフェオレ!」


「…さっきも飲んだじゃん」


「いいのー!」


「カフェイン中毒者」


「うっさい!早く持ってきなよ」



彼女は笑い、俺も笑いながらドリンクバーへと向かう。


自分のジンジャーエールと彼女のホットカフェオレをカップに入れ部屋へ戻る。


彼女は煙草を咥えながら、ピピピと曲を探しているようだった。



「つんちゃん…咥え煙草」



俺は彼女にドリンクを差し出しながら顔を少ししかめて言った。


彼女は「やれやれ」と言うように、唇から煙草を外す。


ビジュアルには似合わない言動や行動を彼女は時々する。


それらをする時の彼女は、俺は正直好きになれなかった。