俺を待ちくたびれてたのかわからないけど、美咲さんは車の窓を開けて左手には俺の買ったカフェオレ、右手には火のついた煙草があった。


煙草を吸う女は世の中の男は嫌がるみたいだけど、美咲さんのその姿はとても画になる。


その姿がピアノを弾いてる姿の次に好きな姿だった。



「おっまたせしました~」


「おかえり~」



俺が助手席に乗り込む時、美咲さんは煙草の火を灰皿で消しながら歌うように、そして流れるように言ってくれた。



「さぁ、お坊っちゃんどちらへ行きましょうか?」



美咲さんはふざけた口調でエンジンをかけた。


行先なんてどこでもよかった。


ただ、暇だからと時間を俺の為に割いてくれることが嬉しかった。



「…けーすけ?どうしたの?」



心配そうにこちらを見る美咲さん。


なんだか子犬のような表情が可愛く見えた。


年上の美咲さんにそんなことを思うなんて失礼な話だけど。