少しの沈黙の間、聞こえる音は店内のBGMとカチャカチャという食器の音と翔の野菜をかみ砕く音だけ。


そして、たまに聞こえる私の携帯のバイブ音。


バイブ音は主に圭介からだった。



【急に休講になっちゃったから、友達とカフェに来てるよ。ほんと急すぎて友達と落ち込んでた;;】


【そうなんだ。おれは珍しく授業なう】



メールを返している私を見て、翔が唐突にこんなことを言ってきた。



「その後輩ってさ、お前の対象じゃないの?」


「何の?」


「恋愛の」



思わず吹き出しそうになった。


圭介と恋愛?


そんなのある訳ない。



「えー?ないない!弟みたいなもんだから」


「弟ねぇ~…」



私の答えに翔が首を傾げる。


私は頑なに「ない」を言い続けた。