「いやー、カッコいいわ。初めて近くで見た!」



花月の興奮は収まってないようだった。


あたしも、初めてだよ。


近くに…尚且つ、声が届くなんて。



「噂だけど。圭介先輩、彼女いるらしいよ」

「へ?」

「あくまでも噂だけどね。でも、まぁいるよね!いない方が変だわ!」



花月は笑いながら購買のおばちゃんに「ウーロン茶くださーい」と小銭を出しながら言い、てきぱきとそれを受け取っていた。



「実子?買わないの?」


微妙にショックを受けているあたしを心配そうに覗きこんだ。



「あ、うん。買うよ…」



あたしはギリギリ届く声でアイスティーと伝え、小銭を渡しキンキンに冷えたアイスティーを受け取った。


…なにショック受けてるんだろ?


バカじゃん。


あたし。


ただ、憧れてるだけだし。


ちょっとぶつかっただけだし。


先輩が卒業するまで、見てるだけだし。


先輩に彼女がいたとしても、


あたしには関係ない。