「・・・・・」

あたしは思わず絶句して絹糸に目配せする。

ちょっと絹糸! いきなりそんな事・・・!


「つまりほれ、永久は妾腹じゃな。正妻の華子とは『なさぬ仲』というやつよ」

「きぃぬぅいぃとぉぉ~」


あたしは片手で絹糸の首根っこをつかみ、グイッと目線まで持ち上げた。

お互いの鼻先をガシッ!とくっつける。


「い~からぁ。別にそんな事、わざわざ口に出して説明してくれなくて、いぃ~からぁぁ~~っ!」


おのれはっ!!

本人目の前にして言うセリフかっ!!

ちったぁ気をつかえっ!!


「皆が知っている事じゃ。お前も知っていた方がよかろうが」


ぷらんぷらんとぶら下がって揺れながら、絹糸は悪びれる様子もない。

こいつぅ~~!

このままパッと手ぇ離したろかいっ!


「愛人の子として、本来ならば見向きもされずに一生を終えるはずだったんじゃが・・・」

「絹糸」

ベラベラとしゃべる絹糸の声に、門川君の声が重なった。



「それ以上は言う必要はないだろう」

「そうかの?」

「ああ、そうだ」

「本当にそうかの?」

「・・・・・」

「華子が、こやつに目を付けたのじゃぞ」

「・・・・・」

「事情を知っておくべきではないか?」