「あ、あの・・・」
「何?どうしたの?」
「あれ、店員さんは?」
目を丸くし、亜紀に聞いた。
「何言ってんの?もう、とっくにいないよ」
「マジで?」
「うん」
頭を抱えたい衝動にかられたが、亜紀の手前、それはできない。動揺が関節にまとわりつき、行動をぎこちなくさせる。
「ねぇ、どうかしたの?おかしいよ」
「おかしくなんか、ないさ・・・」
と答えながら目が泳ぐ。亜紀からすれば、今の哲は挙動不審者以外の何者でもない。
それを哲は察する。どうあがいてもいい方向には向かっていない。
「ちょっとトイレ」
気になる事をそのままにしていては、何も解決しないのだ。
「なんだ、そう言う事」
別に腹を下したわけでもないのに、こう言われるのは悲しいものがあるが、背に腹は代えられない。哲はあえて答えずに立ち上がった。