さらに明るい部屋に向かう。そこにはたくさんのウェディングドレスが飾られていた。最近は多様な種類があるようで、テレビでこそ見たが本当に着る者がいるかと思える超ミニのものもあった。
「すごい~」
美玲の瞳に無数の純白が映る。
「どれになさいますか?」
「えっと・・・」
決めろと言われて、即これだと決められるほど僅かな量ではない。右に、左にと動き回るだけで、いっこうに決まる様子がない。スタッフはやや困った顔で美玲を見てはいたが、催促が出来るはずもない。駿も同じように思っていた。ただ、スタッフのそれよりも嫌そうな表情があからさまだ。さっきの不満が顔を覗かせ始めたからだ。
「・・・」
歯軋りをしたが、美玲は気がつかなかった。
「うーん、どれがいいっかなぁ」
そう言いながらドレスを手にとっては戻す。それの繰り返しだ。まるで決まらない。
「どうしよ・・・」
「お客様・・・」
ついにスタッフが口を開いた。駿は期待した。が、期待した自分に怒りを覚えただけだった。
「お一つだけでなく、いくつかお試しいただいてけっこうです」
「ホントにぃ?」
「はい、はじめはどれにいたしましょうか?」
あとでこれを、スタッフは後悔する事になる。
一着目。これはオーソドックスなドレスだった。これを選ぶのにあれだけの時間を要したと思うと、無駄遣いにしか思えなかった。