次の式場に行くまでの間、長い桜並木を通った。桜の花びらは淡くやさしい色を奏でて、二人の間を抜けていく。わずかだが癒される。
「はぁ・・・」
美しさには到底似つかない深いため息。それから空を、駿は仰いだ。光の加減なのか、浮かぶ雲の白さと桜の花びらの白さが繋がり、無限の時間を伝えてくれるかのようだ。
“いいのか?”
問い掛けた。
“よくない”
誰かが答えた気がした。それを胸に秘め、ゆっくりと歩き続ける。
「駿!」
突然頭の中に、別の声が入ってきた。
「駿!」
二回目の声で、その声が誰なのか理解した。美玲だった。
「ここじゃないの?」
けれども言葉の意味は理解していなかった。“ここ”とはどこを指しているのか、それなりの時間を要した。だから声を掛けられてから、十歩ほど歩いていた。
「あっ・・・」
“ここ”の指している場所は、次の式場だった。
「通り過ぎてた」
慌てて引き返す。走ると言うよりは、小走りと言う感じで、その様はやや怪しく感じられた。