「お待たせいたしました」
テーブルの上に、二つ皿が並んだ。
「わぁ、おいしそう」
美玲が言った。駿は何も言わなかった。口を開くと美玲に対する不満が、堰を切って溢れてきそうな、そんな不安があったからだ。
結局、食べる事にした。後の事は敢えて考えない。そうしようと決めた。
無口な駿をよそに、美玲は一人話し続けた。話の内容はもっぱら結婚式の内容の事だ。
だから募る苛つき。
「・・・」
「そっちはおいしくないの?」
黙って食べる駿に対して美玲は言いながら、勝手に駿の皿に乗っているビーフを一切れ口に運んだ。
「こっちもおいしいぃ。なんで黙っているの?」
駿の様子を気にし出したようだった。しかし、苛ついているところで、こういった態度を取られるのは非常に不満だ。眉間に一瞬シワが寄り、すぐに戻った。けれども、駿は何も言わない。
「駿?」
「・・・食べてるから」
話さない適当な理由だった。ただ、浮かれている美玲は良いように考えた。おいしいから集中して食べたいのだと考えたのだ。
「うん、わかった・・・」
静かな食事の時間が続く。
やっと駿が口を開いた時は店を出る時だった。
「行こう」
「あ、うん」
慌てて駿の後ろをついて歩いた。
二人が残された席の隣にあった花が一輪、落ちて枯れた。