「すいません」
誰もいないレジで、最低限聞こえるかと言った感じに、哲は店員を呼んだ。おそらく、たぶん、きっと、さっきも話していたように店員は、一人しかいない。だから、思っていた通り出てきた店員は、さっき料理を運んできた店員だった。
「お待たせしました・・・あれ、どうかいたしましたか?」
さっき席にデザートを持っていったばかりだ。まだデザートを食べているものばかりだと思っていた。もう、帰るのだろうか。それにしては彼女が、亜紀がいない。店員が不思議そうな顔を浮かべるのも当然だった。
「あの会計を・・・」
「お一人で帰られるのですか?」
「違うんですけどね。ちょっと彼女がいると会計しづらいんですよ」
店員は察した。この商売を長い事やっていると、付き合っている段階で、彼女に財政を握られている彼氏を何人か見た。きっと、この男も悲しいかなそうなのだろう。
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員は伝票を確認しながらレジを打っていく。最後、デザートのところにきたところで、哲は見逃さなかった。
“千五百”
やはり頼んだデザートは高かった。予算オーバーだった。こうして先に、亜紀にバレないように、支払いに来て本当に良かった。胸をなで下ろした。
「じゃ、これで」
勢いよくクレジットカードを出した。この瞬間にも亜紀が来るのではないかと、怯えていたのかもしれない。
「こちらにサインをお願いいたします」
もうなんて書いてあるかわからない感じにサインをした。席に戻りたいと気持ちが急いていた。
「ありがとうございました」