タクシーのドアが開いて……、




私は先に外へと…降りた。






「…………晴海くんは…、帰らないの?」




彼は…こくん、と小さく…頷く。





「……わこ。」




「…ん?」



「……コレ…。」




そう言って、彼が差し出してきたのは……




「……鍵……?」




「わこに、返したいものがある。」




「…………?」




「それで、俺の部屋に入って。」



「………なに…、どういう……」




「サヨナラ。」





バタンと目の前で…、ドアが閉まる。



「……晴海くん?!」



後部座席のドアを叩くけれども…


彼は、もう私を見ない。






「……晴海くん……?」





タクシーが……動き出す。




「待って……!」



追いかけようとする足が…鉛のように重たかった。







足を止めて………



タクシーが走り去るのを、ただ……見送る。






手の中には………




彼が、私に預けた…鍵。









それをギュッと握りしめて。






マンションの中を…走っていく。