ゆっくりと扉を開くと…



壁にもたれ掛かってしゃがむ博信が、上目遣いで私を見上げた。



「…ごめんね、待たせて。」



「いや、こっちこそ。夜分にごめん。」



立ち上がったのはいいが、よろめいた博信は…私の肩に掴みかかった。



「…そっちこそ、大丈夫なの?」



「余裕。…佐倉は?寝てるのか?」



「うん。今ようやく…。」




そこまで言って……

はた、と気づく。




私の足元に………




晴海くんの靴が!





私は視線を落とさないように……



足で、その靴を端に追いやる。



幸い……



博信は、気づかない。




「ふーん、寝てるんだ?じゃあ…ちょっとだけ充電。」



「…………。」



博信が……


無邪気に私に抱き着いてくる。




晴海くんに…見られてないよね。






部屋の奥のソファーの陰……。



気にせずには、いられなかった。




「博信…、美帆に見られちゃうかもよ。」



「大丈夫だろ、ちょとくらい。」



「…でも……。」



「いいから。気にするな」



顔が近づいて来て……




唇が重なりかけたその瞬間……、




『ドシンッ』…と……



部屋の奥から物音。







晴海くん……?!



動悸が…次第に早まる。




今の……


何?!



「佐倉、ソファーからでも落ちたか?」



博信の視線が、部屋の奥へと移っていく。



「…そ、そうかも。参ったなあ、寝相悪くて。」



「…わこは人のこと言えないだろ。」



「……失礼な。」




「………まあ、キスの続きは今度ってことで…。
…じゃあ、帰ろうかな。」