「…何作ったの?」




「……チャーシュー。」



「…マジ?うわっ食べたい!」




え。
マジっすか?!




「…さっきラーメンに入ってたよ?てか、まだ食べれるの??」




「…ん。育ち盛りだから。」



「それ以上成長しないでくださいな。」



「…あははっ、いーじゃん。」




「催促してる?」



「うん、もちろん。」



こういう時の必殺スマイルはさすがとしかいいようがない。



ちきしょー…、かわいいぜ。




仕方なく……



鍋の蓋を開ける。



味見もできていないから、自信はない。



けれど……


うん、いい色。味が染み込んでいればいいけど……。




「まな板どこー?」


晴海くんがキョロキョロと辺りを見渡す。



「いいよ。座って待ってて?」



「人作るとこって見た試しないから…見てたいな。」



「昔お母さんが作るのとか脇でみなかった?私、かじりつくように見てたから…たまに邪険に扱われてたよ。」



「………。」




…………?
なぜに沈黙…?







「…母親なんていない。っつか、見てると邪魔?」






「……………。」




お母さん……



いないの……?




「……ごめん。…それに…邪魔じゃないよ。照れ臭いだけ。」



触れてはいけない話だったかな……。



晴海くんの顔……
見れない。




「まな板、上のラックにある。」



「…あ、ホントだ。……ハイ、どーぞ。」



「……ありがと。」






チャーシューに巻かれたたこ糸を切って……



それから、スライスした。




白髪葱を上にのせて……


煮汁をかけて…



完成。




その工程を……



晴海くんはただ黙って見つめていた。









「…ちょっと味濃かったね。」



お腹いっぱいだけど…


味見も兼ねて、先に口へと運ぶ。



「…どれどれ?」



パクリと……



続いて、晴海くん。




「……うまっ。」



「え。ホント?」



「嘘ついてどうすんの。」



育ち盛りの(?)男に限界はないのか……


彼の箸が進む。





「酒のつまみでしょ?このくらいが調度いい。…てか、平瀬さんのお母さんって料理上手?」



「…うん、そうだね。美味しかった。」